レーシックのイメージ作りと知的タレントの功罪
レーシックの宣伝にはタレントやアイドルはもちろんのことですが、多くの知識人(知識があることを売りにしている芸能人)も登場します。
例を挙げれば、今回ガイドライン違反などで集団訴訟の対象となっている錦糸眼科のイメージキャラクターをしていた
経済評論家 勝間和代氏
レーシックを行うと、メガネが楽しくなる不思議さ!!- 勝間和代公式ブログ: 私的なことがらを記録しよう!!
イントラレーシックを受けました- 勝間和代公式ブログ: 私的なことがらを記録しよう!!
それからレーシック難民はコンタクト業界の陰謀であるとの説を週刊誌に記述した
改めてサイエンスライター(?)の竹内薫氏の文章を読み返してみる★の巻 - LASIK術前術後に眼位検査とサイプレジンでの潜伏遠視の検査をしてほしい
人によるでしょうが、自分は周りが学者ばかりであるためこの人たちのことがどうしても理解できません。
その理由は、少なくとも私の周りのまともな学者は、「自分で受けて安全だったからレーシックは安全!」「自分もレーシックとは違う近視矯正手術のIOL受けたけど経過良好だし、レーシック受けた知り合いも成功してるからレーシックも安全!」形式の発言は普通行わないからです。
まともな学者は、様々な論文や海外の事例などを調べたり、手術の母体数や後遺症のパーセンテージ、そして手術で起こりうる後遺症は何かなども調べた上、レーシックの安全性について論じるのが普通です。
しかしこの二人の言説を読む限り、そのような資料などを参考にしている様子はまるでありません。
勝間氏は英語の勉強本を出しているくらいですし、竹内氏も帰国子女ということなので、アメリカのFDAが出しているレーシックの注意喚起のページや、アメリカ版事故情報データバンクシステムのMaudeのレポートくらいは読める能力があって然るべきですし、それくらい読んで、記事の中でも多少触れておくのが少なくとも知的であることをイメージに用いている人間がしておくべきことないでしょうか?
下記、FDAのレーシックに関する注意喚起の記事およびその翻訳をレーシック被害者の会から引用します。
FDA:どのようなリスクがありますか?どうやって自分に適切な医師を見つけたらいいですか?
(FDA「When is LASIK not for me?」
大多数の患者は屈折矯正手術の結果に非常に満足しています。しかしながら、他の医療処置と同様に、レーシックには関係リスクも存在します。屈折矯正手術の限界と起こりうる合併症を理解することが重要です。
屈折矯正手術を受ける前に、あなた自身の価値基準に基づいて慎重に手術のリスクと利点を熟考する必要があります。友人に影響されたり医師から手術を受けるように勧められて手術を受けるようなことは避けるべきです。
- 失明する患者もいます。一部の患者は指標で測れるような視力を失います。メガネ、コンタクトレンズ、または手術でもこれを回復することはできません。
- 一部の患者には視機能を低下させる症状が発生します。一部の患者は、グレア、ハロー、または(もしくは「それに加えて」)複視が発生します。これは夜間視力に深刻な影響を与えます。視標上は良好な視力が出ていても、一部の患者は治療前に比べて夜や霧の中のような状況下ではコントラストが低い状態になっているかもしれません。
- 低矯正または過矯正になる可能性があります。メガネやコンタクトレンズなしで20/20(日本で言う1.0)の視力を獲得する患者は数パーセントに限られています。追加治療が必要になるかもしれません が、追加治療が不可能な場合もあります。手術後もメガネやコンタクトレンズが必要な場合があるかもしれません。あなたが唯一、手術前に非常に弱い(眼鏡や コンタクトレンズの)処方を必要としていた場合でもその可能性はありえます。あなたが手術前にリーディンググラス(老眼鏡)を使用していた場合は、手術後 もそれが必要な場合があります。
- 重度のドライアイを発症する患者もいます。手術の結果、眼が十分に 潤い快適さを保つのに十分な涙を生産できなくなる場合があります。ドライアイは、不快感を引き起こすだけではなく、断続的なぼやけやその他の視覚的な症状 により視機能の質を低下させます。この状態は生涯続く可能性もあります。集中的な目薬による治療と涙点プラグまたは他の手術が必要になる場合もあります。
- 結果は、一般的にどのような種類屈折異常であっても、屈折異常が大きい患者には良いものではありません。医者に自分の期待を話し、手術後も眼鏡やコンタクトレンズが必要になるかもしれないことを認識すべきです。
- 遠視患者の場合、手術で回復させた視力が年齢とともに悪くなる可能性があります。遠視の場合、手術後に改善した視力は年齢と共に低下していくこともありえます。これは自覚的屈折検査(レンズを使用して行う調節麻痺薬使用前の検査)が調節麻痺薬を使用して行った屈折検査の結果と大きく異なっている場合に起こり得ます。
- 長期的なデータはありません。レーシックは比較的新しい技術です。レーシック手術に使う最初のレーザー1998年に承認されました。そのため、レーシック手術の長期安全性および有効性は不明です。
FDA資料の翻訳 - lasikmutualjapan ページ!
原本:
http://www.fda.gov/MedicalDevices/ProductsandMedicalProcedures/SurgeryandLifeSupport/LASIK/ucm061366
しかし、竹内薫氏は週刊新潮でレーシック難民陰謀説を執筆し、勝間氏はガイドライン違反の件で現在裁判中の錦糸眼科のイメージキャラクターです。
この件に関しては、私はたとえ知識人であっても自分の専門以外の事に関しては案外知識が無い上に、一部の人々は専門家だと自称している人の言われるがままに任せて自ら資料を調べることもせずに無責任に発言を行えるんだなと痛感しました。
少なくともレーシックの専門書を一冊でも読んでエクタジアや偏心照射、削りすぎによるコントラスト低下、過矯正など「起こりうる失敗」を眼にしていれば、竹内氏のように陰謀説までたどり着くことは無かったのではないでしょうか。
知識人とされている彼らの作成する記事は正直、レーシックのアフィリエイトを行っている人々とクォリティ的にそれほど大差ないレベルです。クオリティを上げるための調査は行わず、「安全」の根拠となる成功体験は自分と自分の知り合い範囲以上の行っていないのでそうなるのも仕方ありません。
長く書いてしまいましたが私が言いたいことは、この消費社会の中では「知的である」と言うイメージのタレントが商品に「お墨付き」を与えることが、消費者に安全と安心のイメージをもたらしている場合もあるのですが、レーシックの例での勝間和代氏と竹内薫氏の例に見られるとおり、「知的なイメージのタレント」が「安心」を強調していても、実際はそうでない場合もあると言うことです。
おそらくはサプリメントなどの健康食品でもこの手の話は多いのでしょうね・・・。