LASIK術前術後に眼位検査とサイプレジンでの潜伏遠視の検査をしてほしい

元一部上場企業のOLがレーシック後遺症で失職、視覚障がい者になるブログです

自由診療解禁の理由に医者の倫理観は期待できるか

「医療詐欺 先端医療と新薬はまず疑うのが正しい 講談社+α新書」という本を題名に惹かれて読んでます。
上昌広という東京大学医科学研究所の特任教授が書いたのですが、中盤まではともかく結論がビミョー。
タイトルが「医療詐欺」なんだが、自分にとっちゃこの内容の本を痛い目で読まされたのが詐欺って気分です。

要するに
−日本の医学界は規制が厳しすぎ、官僚がガイドライン作るのに10年とかかかるから、先端研究が遅れて新薬開発とかもできない。
−開業医の団体が競争の激化を恐れ新設医学部作るのに反対して医者が少ないから、将来医者不足で大変な時代が到来するからやすい私立の医学部を作れ

とかそんな内容。

新設で私立の医学部を作って(慶応大学みたいな学費の安い、6年間で2170万円とかのやつだと著者は言っている)金持ちでなくても医学部に入れるようにすべきと書かれているんだが、「そうか慶応医局の眼科医が品川近視でバイトするのはそういう理由か」と別の意味で納得しちゃいました。開業したくてもサラリーマンの子弟だと苦しいもんね。そりゃ、患者に「安心安全ですよ−」って説明したくなっちゃうよね。

大手レーシック眼科でバイトしてた私大医局の先生の記事


上昌広さんの2ちゃんの評判引用しときます。

0010名無しゲノムのクローンさん 2014/04/24 14:22:15
教授って言っても特任教授だろ?ポスドクと変わらん。 世間一般から見たら東大教授ってことになるんだろう。
http://itest.2ch.net/wc2014/test/read.cgi/life/1398297434/

そうなんだよね。東京大学医科学研究所特任教授って言ったら偉そうに見えるよね。でも「特任」教授なんてポスドクと同じだから。

官僚が統制するガイドラインによる規制のせいで日本の先端医療研究が遅れてるっていう内容なのですが、先端医療研究の中に自由診療も含まれてて、自由診療には大賛成なのが自由診療による医療被害者であるレンコンには「おーい現実見えてますか?」という印象を受けました。

…ところが日本では規制が有るということで民間がそこまで前のめりになれない。開発力が落ちれば日本患者は海外の患者が先端医療を受けているのを指を加えて眺めるだけ。そのようなこれまでお話してきた「ドラッグラグ」と同じことが起きるのです。

官僚が現実を隠蔽する「ウソ」
このような弊害が明らかであるにもかかわらず、なぜ国は再生医療に規制をかけようとしているのでしょうか?
確かに医療研究において安全性は重要なものの一つですが、悪質な医療機関には医療訴訟や刑事告訴などで個々に対応することができます。研究者全てに規制の網をかければ全体の開発力が落ちるのは当然です

「医療詐欺」 上昌広 講談社+α新書 2014年
第2章「新薬利権」でないがしろにされる患者たち P69-70

悪質な医療機関は医療訴訟や刑事告訴で対応できる…でも現実は医療訴訟ってものすごく大変なんですが、それわかって言ってるのでしょうか?


まず、医療訴訟って、個人でやるとすれば最低金額250万円くらいからかかります。集団訴訟だとこれよりかなり安くなり、証拠の共有もできるからレーシック被害訴訟はなんとか集団提訴にこぎつけたわけだけど、個人でやるなら最低250万円+証拠集め。それってそんな簡単な障壁かね?


ちなみに現状の法律では、医療事故が起きた場合、調査は第三者機関じゃなくて、なんと事故を起こした病院が調査することになってる(この最低な状況を作り出したのは民主党!! http://president.jp/articles/-/12009 )ので、証拠集めたりするのも大変だと思いますけど、それってそんなに簡単な障壁でしょうか?


それから、刑事事件ってすごく簡単に書いてくれるけれど、お医者さんを刑事事件で訴えるのってすごく大変ですよ。お医者さんは一般人と違って法律で厚く守られてるから。

Allaboutの医賠責保険の基礎知識のページに色々書いてあるので引用しておきましょう。

刑事責任:刑罰法規に規定されている犯罪を行ったため、刑罰を課せ られる責任です。ここでは刑法211条1項前段で規定されている「業務 上過失致死罪」が問題となりますが、医療過誤では、よほど悪質でな い限り、刑事裁判になることはありませんし、そこまで発展したとし ても、罰金刑か執行猶予が言い渡されるケースががほとんどです。

医療過誤で問われる医師の法的責任(民事・刑事・行政責任)

レーシック集団感染の銀座眼科の院長はあまりにひどかったから禁錮2年の実刑判決。これ医療過誤ではすごく珍しい。まあ、裁判中の発言とかもほんとひどかったんだけど。


インプラントでは死亡事故を起こした八重洲の飯野診療所事件が刑事告訴か。
http://judiciary.asahi.com/fukabori/2014012400004.html


池袋の品川美容外科が引き起こした脂肪吸引患者死亡事件は業務上過失致死罪で金庫1年、執行猶予3年か。患者は亡くなっても執刀医は執行猶予なんだなぁ。
http://s.ameblo.jp/doctor-d-2007/entry-10412166533.html


運良く「刑事」までいけても、多くの場合患者の方は死んじゃったり、生き残っても生活に甚大な障害を生じちゃったりしてますから「個々に対応することができます」って、ご遺族の方もいらっしゃるかもしれないのに簡単に言える気持ちが私にはわからないかな。


こういうことを簡単に言ってくれるあたり「安全性は重要なものの一つ」って言う言い方をされるあたり、実際に被害者になった人々の心境をあんまり考えてない人なのかな?って思っちゃいます。「安全性は重要なものの一つ」って、安全性は何にも替えがたい最も重要なものではないでしょうか?それと同じくらい重要なものって何かありますか?


それと民事裁判も簡単に言ってくれるけれど、
医療訴訟において重要なのがその当時の医療水準において行われた施術はどんなものだったか?というのが基準として大事になってきます。例えば屈折矯正手術のガイドラインではどんなに削っても上限10Dまでの矯正と書いてあるけど、30D削ってたらこれはちょっと…という感じで裁判所の判断がなされているようです。だから、その基準内で収められてたら、死ぬほどの苦痛をあじわってても裁判は難しいです。


それに、後遺症と施術内容の因果関係を出さないといけないけど、レーシックみたいな新しい治療法はまだ実験段階で後遺症も確定してません。どんなに数が多く、共通した後遺症でも(レーシックだったら羞明や眼位異常)、研究が進んでおらず因果関係が証明できなければ裁判で後遺症として認めてもらえません。


それから更に、
自由診療でクリニックを訴訟対象にする場合は、「自分のクリニックでしかその施術をやってない」という状況も考えられるわけですが、この場合被害者はいろんな医者から「この治療は異常だった」という見解を求めないといけない羽目になりますが、一般的にお医者さんは同業者を批判したがらないものなんです。
レンコンの住んでる県のインプラント歯医者なんてほんとひどいけれど、被害者が回されて大迷惑の大学病院の歯科医さえも「僕ら医者は同業者の批判ができないんだよ」とおっしゃってますもの。

さて、暗澹とした気持ちにもなったが、上で引用した医賠責保険のページにはこういう記述もあったので引用しておきます。

民事責任:民事上の損害賠償責任のことです。責任を果たすために は、必ずしも訴訟判決を経る必要はなく、当事者間で話し合いの場を 持ち処理することもできます。

法的性質には、「債務履行責任」と「不法行為責任」があります。ひ とつめの債務不履行責任とは、債務者が契約によって課せられた義務 を全うしないために発生する責任のことです。医療過誤の場合、診療 契約によって、医療施設の開設者が患者に負う債務を履行しなかった ことになります。

この責任は、契約当事者間(医療施設の開設者と患者)にしか発生しませんので、医療機関に雇用される医師は、患者に対してこの責任を 直接負いません。

もうひとつの不法行為責任は、過失によって違法な行為を行って他人 に損害を発生させたことにより生じる責任です。原則として、金銭に よる損害賠償となりますが、契約関係は必要としないので、先に述べ た債務不履行責任とは異なり、医療に携わった現場の医師も責任を負うことになります。

実際の医療過誤をめぐる訴訟では、この債務不履行責任と不法行為責 任の一方または両方が追求される可能性があるため、①医療機関の開 設者だけが被告となるケース、②開設者と医療従事者(医師・看護師 等)、③医療従事者だけが被告になる3つのケースが考えられます。 TOPページでも触れたのですが、近年の訴訟傾向としては、患者側が 賠償金の満額を確実に受け取るために、医療機関の開設者に加えて、 勤務医も共同被告として訴えるケースが増えてきています。

医療過誤で問われる医師の法的責任(民事・刑事・行政責任)
http://jami2009symp.info/liability.html

なぁるほど!!

…ってことは例えば今訴えられている錦糸眼科や品川近視クリニックでガイドライン違反などで患者に損害を追わせた場合、クリニックだけじゃなくてその施術を行った医者も共同責任で追求できるかも知れないってことかー。

今、埼玉県で開業医してるレンコンを過矯正にした執刀医なんぞも訴えられるかもしれないですね。

これからガイドライン違反クリニックで働く眼科専門医さんたちも、自分も共同で訴えられる可能性を頭に入れておいたほうがいいかもしれませんね。


ちなみに、刑事訴訟まで行かなくても免許取り消しまでなされる場合も有るみたいですね。

行政責任:自動車事故を起こしたドライバーが免停・取り消しなどの 行政責任を負うことがありますが、医療過誤の場合も同様に医師は行 政責任が追及されることがあります。医師法では、①罰金以上の刑を 課せられた場合、②医事に関して犯罪、不正行為があった場合、③医 師の品位を損ねた場合、のいずれかに該当した場合、厚生労働大臣が 「戒告」「3年以内の医業停止」「免許の取り消し」の処分を行なう ことができる旨が規定されています。

ただし、処分の一切を厚生労働大臣が独断で行えるということではな く、医師法では、諮問機関である「医道審議会」の意見を聴いてか ら、処分を行うこととしています。また、処分を受ける医療側には弁 明の機会が与えられています。

なお、刑事責任に問われたからといって、必ずしも行政処分に該当す るというわけではありません。逆に、刑事責任に問われなかったとし ても、行政責任を問われたケースもあります。

医療過誤で問われる医師の法的責任(民事・刑事・行政責任)
http://jami2009symp.info/liability.html

これからガイドライン違反クリニックで働こうと思う眼科専門医さんたちはよく覚えておくといいですよ!!


てか、そもそも医賠責保険の会社さんに忠告ですけど、レーシック専門クリニックの眼科専門医さんたちはガイドライン違反が常態化し、提訴されるリスクはゼロではありません。
だからそもそも通常のお医者さんと同様の保険に入れる状態は、保険システムの観点からの観点から見てあまりよろしくないのではないかと思います。


レーシックをする眼科医向けのプランを作るか、特約を作るか、そもそもレーシック専門クリニックで事故起こした場合は対象外にするなど別枠を組んだほうが良いと思いますよ!