【悲報】JINSのブルーライトカットレンズは、近視抑制のバイオレットライトまでカットするレンズだった
JINSが主張するブルーライトの波長「380-495nm」…
JINSが主張するバイオレットの波長「360-400nm」…
あ、皆さん、こんにちは。レンコンです!!
JINSの新しく発売する「バイオレットライト透過レンズ」について考えて
混乱してるところでした。
事の始まりは…
先日慶応大学の坪田教授が
「近視=将来失明につながる!!」
「中学生の10人に1人が失明」との
センセーショナルな説を展開したのに対し、日本眼科学会が
「強度近視は病的近視とは違い、
ほとんどは生涯良好な矯正視力を保つことができる」
と声明を出していた事です。
前回のブログで取り上げたので、よろし家ければお読みくださいませ。
坪田教授のも張っておこう。証拠写真として。
https://twitter.com/akikawa2015/status/1190977332686684160
「近視!=失明???」と恐怖されている近視眼者さんのために
一応日本斜視弱視学会の近視に関する発表も引用しておきますね。
学童期に近視が進行しても、ほとんどのお子さんは失明原因となる病的近視に至ることはありません。最近の研究では、病的近視にまで至る患者さんは、学童期に特別な眼底所見があることが分かっており、学童近視と病的近視は異なる疾患である可能性が示唆されています。しかし念のため、強い近視のあるお子さんは、専門の施設で定期的な眼底の検査を受けることをお勧めします。
そんな感じなのですが、この慶應大学の坪田教授は、以前に
ブルーライトカットの眼鏡を共同開発した大手眼鏡メーカーのJINSと組んで、
近視抑制のための医療機器を開発すると宣言されたのです。
以下、ジンズのHPから。
長くなりますが、今後も使用する魚拓代わりなので丸っと引用いたします。
アイウェアチェーンの「JINS(ジンズ)」を展開するジンズホールディングスが、慶應義塾大学医学部発のベンチャーと共同して、世界初となる近視抑制のためのメガネ型医療機器開発プロジェクトに乗り出す。
慶大発ベンチャー「坪田ラボ」が研究を続けている「バイオレットライト」を使ったもので、2023年をメドに「近視進行抑制メガネ型医療機器」の製造販売承認取得を目指している。ジンズの田中仁CEOと、坪田ラボの社長で慶大医学部眼科学教室の坪田一男教授が2019年8月7日、都内で発表した。
共同プロジェクトを発表したジンズの田中CEO(左)と、坪田ラボ社長を務める、慶大眼科学教室の坪田教授(東京都港区)
共同プロジェクトを発表したジンズの田中CEO(左)と、坪田ラボ社長を務める、慶大眼科学教室の坪田教授(東京都港区)
■「バイオレットライト」を活用
バイオレットライトは太陽光に含まれ、ブルーライトより短く、紫外線より長い波長(360~400ナノメートル)を持つ紫色の光。屋内で使われる蛍光灯やLEDライトにはほとんど含まれていない。国内外の研究により、室外で過ごす時間が長い人たちの間では近視の割合が低く、逆に、短い場合には高いことがわかり、慶大の眼科でその原因を調べたところ、バイオレットライトが関与しているとみられる結果が得られた。
坪田教授によると、確認のためヒヨコなどを使って、バイオレットライトを浴びる群と浴びない群に分けて研究したところ、バイオレットライトを浴びたほうの群で有意に近視進行が抑制されたことを確認。また、バイオレットライトを通すコンタクトレンズを装用している場合と、一部をカットするレンズ装用の場合の違いを、13~18歳についてのデータ解析をみると、前者の「通す」レンズ装用のほうが近視の進行が抑えられていた。
メガネの製造小売りにとどまらず、「アイウェア・プラットフォーム企業」を目指すジンズでは、このバイオレットライトに注目。「メガネの『視力補正』という根本的役割を『近視の進行そのものを抑制するソリューション』に変える」切り札的存在と判断。坪田ラボと共同して、管理医療機器の製造販売事業に本格参入することを決めた。
■世界で深刻化する近視問題
共同プロジェクトで開発を目指しているのは、近視が進行しやすい6~12歳の小学生を対象としたメガネ型医療機器。フレーム内側にライトの照射口を搭載、屋外でのバイオレットライトの放射照度の範囲をもとにした量の光を受ける。ライトが直接視界には入らない設計で、外側からも照射はわからない構造になるという。自然な見た目で普通のメガネと変わらないデザインを目指す予定だ。フレームにはジンズの超軽量アイウェア「エアフレーム(Airframe)」のノウハウを活用するという。今後は2019年を準備期間とし、20年から治験に取り組む計画。バイオレットライトについて「受けた」「受けない」の2群の経過観察などにより効果や安全性を証明するなどして、23年のうちに承認を取得する青写真を描いている。
坪田教授はプロジェクトの発表に際して、近視が近年、世界で深刻化していることを説明。また、近視による視覚障害リスク、失明リスクも上昇しているという。
「日本での失明の原因は、緑内障、糖尿病網膜症、網膜色色素変性と続くが、次は強度近視で、白内障より多い。中国では2番目の原因。世界をみても近視の人は増加傾向で、2050年には世界の半分が近視になる可能性を示した調査結果もある」という。
その原因として考えられるのは、屋内で過ごすことが長くなりバイオレットライトが不足したことだ。
坪田教授が示した資料によると、日本では子どもの戸外遊びの時間が以前に比べて激減。1955年に「男子3.2時間、女子2.3時間」だったものが、40年後の1995年には、男女合わせたデータで「37分」だった。
坪田教授は、近視をめぐる近年の状況に危機感を持ち新たに「近視予防フォーラム」を設立。ジンズも参画することにしている。
ジンズと坪田教授はこれまでにも「ブルーライト」に関して共同研究を実施。その成果として2011年に「JINS PC(現在はJINS SCREEN)」と名付けた「眼を守る」という付加価値を持ったアイウェアを発売し新市場を開拓した。
…JINS、坪田教授と組んで作成したブルーライトカットレンズの甘い思い出を
忘れられなかったのだろうか。JINSのヒット商品、「ブルーライトカットレンズ」。
■ブルーライとバイオレットライトの波長の比較
JINSと坪田教授が「有害でカットが必要!」と主張しているのが
「ブルーライト」。
そして「近視抑制に有効!」と主張してるのが「バイオレットライト」。
2つを調べてみると面白いことがわかりました。
「ブルーライト」の定義ですが、Jinsは波長が380-495nmくらいの光と主張しています。
そして今回ジンズが坪田教授とタッグを組んで売り出す「バイオレットライト」を
通すレンズですが、Jinsの宣伝用のHPによればバイオレットライトの波長は
360-400nmくらいです。
あれ?
JINSの定義で「ブルーライト」の波長が「380-495nm」
そしてJINS定義で「バイオレットライト」の波長は「360-400vnm」
めっちゃかぶってます…
そして下がジンズがブルーライトカットで売ってる
「JINS PC」という眼鏡の透過率になるのですが…
これ見ると、
大体380-400nmくらいの光(バイオレットライト)を、
ブルーライトカットのレンズはがっつり抑制するよ
…というのを示すグラフになってます。
このグラフを見て私が思うにですが、
JINSは「バイオレットライト」の眼鏡を売り出すのであれば、
その前に「ブルーライト」の眼鏡の波長別の透過率を説明して
「ウチで前に売ったブルーライトカットレンズは、
実はバイオレットライトもカットするレンズでした」…とも
言う方が親切なんじゃないかと思います。
だって、一方でバイオレットライトをがっつり抑制するメガネを売ったのに
直後に「バイオレットライトが必要!!」と新しいメガネを売ってくるのは、
消費者的にあまり気持ちのいいものではありません。
それに毎回思うのですが、JINSは毎回広告の仕方があまりにも大げさで
良くないと感じます。
宣伝の仕方を酷評してるエンジニアさんのブログがあったので引用します。
誤解をまねくJINSの宣伝文句
JINS(ジンズ)はブルーライトカットメガネの先駆けで、「ブルーライトを大幅にカット」という売り文句で大々的に広告を打ってヒットしました。ブルーライトカットの眼鏡は付加価値が高く、JINSの場合(JINS SCREENレンズ)は値段がプラス5,000円、ZoffのPCレンズは値段がプラス3,000円。しかもふだん眼鏡をしない顧客層もとりこめるのでビジネスとしてはかなりの成功と言えるでしょう。しかし、その宣伝文句はかなり誤解を与える書き方となっています。こちらがJINSの「ブルーライトが私たちの眼に及ぼす影響」ページからの抜粋。
「ブルーライトは紫外線級に強い光」
紫外線が目に有害で、白内障などを引き起こすのはわかっていますが(安藤、1990)、日常的にふれるブルーライトが有害である(しかも紫外線級に強い)という有力な研究はありません。眼光学の専門家、筑波大学の大鹿哲郎教授によると「眼精疲労の原因として、同じ距離に焦点を固定させた作業や眼の病気、ストレスなどがわかっている。しかし、青色光が有害だとする有力な証拠はまだない」とのこと。(2012年10月30日朝日新聞)
参考:Ando, Mitsuru. “Risk evaluation of stratospheric ozone depletion resulting from chlorofluorocarbons (CFC) on human health.” Nippon Eiseigaku Zasshi (Japanese Journal of Hygiene) 45.5 (1990): 947-953.
「LEDディスプレイから発せられる強力な青色光」
「以前は問題なかったのにLEDディスプレイが登場してブルーライトの問題が深刻になってきている」ような印象を与える文章です。下に詳しく説明していますが、実際のところ、LEDディスプレイは従来のディスプレイよりもブルーライトの放出量が少なくなります。さらに、屋外の昼光に含まれるブルーライトの方がLEDディスプレイよりも圧倒的に強力です。
「網膜にまで到達するほど」
このような書き方だと「可視光の中で青色だけが網膜に届く」「網膜に届くのは危険」と思い込んでしまう人もいると思いますが、これは間違い。そもそも光は網膜に到達しなければ見えませんし、すべての可視光は網膜まで到達します。
ちなみに、このブルーライトカットメガネのビジネスに関しては
神奈川県が商品の比較試験をしたりしています。
神奈川県が動くほどの「微妙広告地帯」であることを、私たち消費者は
わかっておく必要があると思います。
■今日の感想
JINSが主張するバイオレットの波長「360-400nm」
2つが余りにかぶるので、どうしてもバイオレットライトを
うさん臭く思ってしまう自分がいます。
そのブルーライトカットのレンズにしたって、ちゃんと測ると
JINSが主張するよりも全然ブルーライトをカットしていないらしいので、
毒にも薬にもならない点ではいいのかもしれませんが…。
このJINS、冒頭のニュースによると
「近視が進行しやすい6~12歳の小学生を対象とした
メガネ型医療機器」
の開発を共同開発するそうです。
レーシックのように手術ではなく眼鏡なので害があっても大した事には
ならないだろうと思いたいのですが
坪田教授が前に盛んに宣伝して数百人規模の被害になったレーシックのように
万が一、患者に何か危害があった場合、沈黙して逃走することはやめろよ?
…と思うレンコンなのでした。